世界観

 我々にとって「深海」とは、未知という宝石の詰まった宝箱である。
 惑星の殆どの表面が海水で覆われたこの世界で、人々は宇宙(そら)ではなく足元の水の中に夢中になっていた。

テンペスト紀三一○八年十二月十五日
 
 長い年月をかけて成長した科学力を使い、人々は海の上に浮かぶ住処から、夢溢れる未知の領域への旅立ちを開始した。
 海面に浮かぶグランドシップから旅立つ潜水艦の乗組員は、敬われ憧れられる人気、人数ともにこの世界一の職業となっていた。
 これはそんな探求欲や憧憬に呑まれ、少々のスリルをスパイスに暗い暗い海の中を旅する者達の物語。

 否。
 これは、そうだな・・・。
 そんな世界で、たった一隻の方舟が、偶然と運命に導かれ、「約束の地」へとたどり着くまでの物語である。

                                                                                              ―「ノーチラスの書」序文より